医学的に見れば、おならは決して恥ずかしいものでなく、むしろ腸の動きや状態を知る上でとても大切な生理現象の1つですが、末期の胃がん患者や、胃がん治療の為に胃の摘出手術を行っている人であれば、通常の人よりもおならが出やすくなってしまうことがあり、人によっては大きなストレスの原因にもなってしまいます。
おならを我慢してしまうことは体にとって決して良いことではありませんが、そのおならがどういう原因で出てしまうのか、理由について知っておくことは、患者自身や周囲の人の精神的ストレスを軽減する上でも重要です。
胃や腸の状態が悪化することで、ゲップやおならといった気体が出やすくなってしまうことは、胃がんの末期患者だけに特有のことではありません。しかし、胃がんや大腸がんの末期になると、消化器官の状態はかなり悪くなってしまっている為、結果としておならの頻度も多くなってしまいます。
食事の際、慌ててものを食べると、口に入れた食べ物を飲み込むと同時に、空気を一緒に飲み込んでしまいやすくなります。
通常、呼吸によって吸い込んだ空気は気管を通って肺に入りますが、このようにして飲み込まれた空気は、食道を通して胃へと入ります。つまり、胃は食べ物を消化する為の器官であり、体内で空気をためておく為の袋であるともいえるでしょう。
しかし、胃がん治療の為に胃を摘出してしまった場合、空気をためておく場所がなくなる為、空気を体外へ排出しなければならなくなり、結果としてゲップやおならの頻度が増えてしまいます。
手術で胃を摘出した場合、それまでは胃酸によって消化されていた食べ物や、胃の動きで少しずつ腸へ運ばれていた水分が、食事をするとそのまま一気に腸内へ流れ込んでしまうようになります。
腸内へ急に食べ物や水分が流入すると、ホルモンが過剰に分泌されたり、その結果として冷や汗が出たり、場合によっては急性の低血糖症を引き起こして意識を失ってしまうかも知れません。そしてこのように、腸へ食べ物が一気に落ちることで引き起こされる、諸症状をまとめて「ダンピング症候群」と呼びます。
さて、胃の摘出手術後のダンピングによって、食べ物が消化されにくい状態のまま小腸へ流れ込むこと、小腸における栄養の消化・吸収の割合が極端に低下してしまうことも珍しくありません。
そしてこのような場合、未消化・未吸収の食べ物や栄養が改めて大腸にまで流れ込むようになりますが、この結果として大腸にいる腸内細菌が栄養を摂取・分解して、その副産物としてガスを放出します。
腸内細菌によって大腸にガスが充満すると、お腹の膨満感が生まれるだけでなく、それがやがておならとして体外へ排出されてしまうことになり、結果的におならの回数が増えてしまいます。
胃の摘出手術を受けていない人であっても、末期の胃がん患者のようにがんが進行している人であれば、胃の消化・吸収能力は著しく低下していることが一般的です。
すると、やはり腸内細菌が栄養を摂取・分解してガスを放出し、おならが出やすい腸内環境になってしまいます。
おならの治療に関して最善の方法は、おならが出やすい状態を予防することといえるでしょう。つまり、食事の際は慌ててものを食べず、メニューも消化しやすい食べ物を少しずつにすることが大切です。
胃がんで悪化した消化能力を取り戻すことは簡単でありませんが、だからこそ普段の意識によって体外からも消化を助けるようにしましょう。
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