末期の胃がん患者の中には、呼吸困難を訴える人も少なくありません。呼吸困難は、客観的に判断が難しく、あくまでも患者本人の主観的な症状であるため、その自覚症状の説明の仕方は患者により異なる場合があります。ここでは、末期胃がんなどに伴う呼吸困難の原因、およびその改善法について詳しく解説します。
がんに伴う呼吸困難は、胃がん患者においてのみ見られる症状ではなく、広く様々ながんを患う患者において見られる症状。まずは、がん全般における呼吸困難の原因について、考えられるものを列挙してみましょう。原因を大別すると3つに分かれます。
ところで、末期の胃がんにおける呼吸困難は、上記のうちどれに該当するでしょうか?
答えは「すべて」です。
末期胃がんと診断された場合、通常、すでに他の部位に転移しています。末期胃がんの転移先として、肺への転移は珍しくありません。精神的な理由による呼吸困難も、末期であれば十分に考えらえるでしょう。
一般的に考えれば、「腹水による横隔膜への圧迫」が胃がんにおける呼吸困難の代表的な原因ですが、末期胃がんにいたっては、上記の「すべて」が呼吸困難の原因になることを理解しておきましょう。
末期以外における呼吸困難の対処法として、「治療」と「日常の工夫」の2つに分けて解説します。
具体的な治療としては、主に以下の2つが摂られます。
がん治療にともなって肺炎を生じた場合には抗生剤の投与、胸水の貯留に対しては排液、貧血に対しては輸血など、患者の体力が許す場合は、呼吸困難を引き起こしている直接的な原因を積極的に除去します。
患者に対して積極的な治療を行なうことが困難な場合、呼吸困難の症状を緩和させるための治療を行ないます。治療法は2種類。「酸素療法」と「薬物療法」です。
「酸素療法」とは、専用の医療機器を使って酸素を補充する方法です。在宅患者向けの酸素吸入器もあり、酸素を吸入しながら食事や入浴など、一般的な日常生活を送ることが可能です。
「薬物療法」とは、具体的にはモルヒネの投与です。モルヒネの作用により、息苦しさを感じる中枢神経の感受性を低下させ呼吸数を減少させます。それに伴い、体が必要とする酸素消費量も減少。もって、現状の呼吸でも生命維持が可能な状態へと導きます。
なお、「薬物療法」の一種として、気道狭窄などに対してはステロイドホルモンを投与する場合もあります。
日常生活の工夫によって、呼吸困難の自覚症状を緩和させることが可能です。ただし、その前提として、どのような時に呼吸困難を感じやすいか、どのような時に呼吸が楽になるかなど、患者自身の呼吸のパターンを把握しておく必要があります。パターンを把握した上で、各患者それぞれ日常の工夫を試みてください。以下、呼吸困難を自覚している多くの患者に有効な4つの方法をご紹介します。
体を動かすと、動かした分、体は酸素を必要とします。逆に言えば、体を動かさなければ必要な酸素量も少なくて済む、ということ。
テレビのリモコンやティッシュなど、日常的に使用するものを手の届く範囲に置く、または、トイレが一番近い部屋で寝食をするなど、なるべく体を動かさなくても住む生活空間を作ってみましょう。
仰向けになると、横隔膜が上がり呼吸面積が減少します。逆に起き上がった状態の場合は、横隔膜が下がって呼吸面積が拡大し、呼吸が楽になります。
起き上がり式のベッドを利用するなどし、なるべく寝たきりの状態にならないよう工夫しましょう。
室内に舞う目に見えないホコリや、タバコの煙などは、患者の呼吸困難を悪化させる要因となります。室内を清潔にしつつ換気を良くし、かつ、家族は禁煙をするようにしてください。
室内の温度や湿度にも気を配るようにしましょう。
会話が多すぎると、患者本人は呼吸が苦しくなります。その一方で、会話が不足すると、患者の精神的ストレスが蓄積します。
意思疎通のための短縮された合図を決めるなど、なるべく「患者に多くを話させない」で、かつ「たくさんのコミュニケーションをとる」ような工夫をしましょう。
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